野いちごの唄
耕す季節 植えつけの季節
ほう葉のかおり 土のにおい
緑の山々 せせらぐ川べ
黄色くうれた 野いちごの味
草刈りの季節 日やけの季節
夕顔の花 ひぐらしのこえ
ほたる狩り ぼんおどり
遠くに聞こえる 夜汽車の汽笛
※ 人たちの 声が聞こえる
風の中から 土の中から
実りの季節 日暮れの季節
赤トンボ 羽根がキラキラ
姉の吹く ハーモニカ
暗い部屋 母のよぶこえ
※ (くりかえし)
白い花びらの唄
栗の木林に 風吹きぬけて
ほほをなぜる 草にめをさます
青い空に 向かってゆれる
細いかげの 花は除虫菊
※ 流れに消える 白い花びら
涙ににじむ 白い花びら
たよりなさげな 白い花びら
小さくふるえて 流れにまいおちる
浮かべた流れは 谷間をめぐり
遠くの国へと いつも消えてゆく
※ (くりかえし)
風にまかせる 野の花やさし
つかれた私の 胸に抱いてみた
ささやけ草よ 私をいやせ
淡いかおりよ 胸にしみわたれ
※ (くりかえし)
まむし草
人生のふしとふし 出会う花たちは
まどろみの中の スケッチのよう
青草の果てに 少年の見た
赤まだらの茎にのけぞる
息づくまむし草
立ち上がるかげろうに 心うばわれて
胸を躍らせて 春の山さまよう
森影の果てに 妖しく咲いた
赤まだらの茎にのけぞる
ささやくまむし草
げきじょうはやがてさめ また繰返す
ぼかし絵のような 大人への予感
夕暮れの果ての 暗闇に浮かぶ
赤まだらの茎にのけぞる
見つめるまむし草
浅茅ケ宿 ─雨月物語より─
※ 今は昔の物語
男はいつでもボヘミアン
ここはどこやら浅茅ケ宿
浦島草が咲きみだれ
ひっそり暮らしている男と女
働き者にきれいな妻
※ (くりかえし)
女をすてて都へはしる
男はいつでもさすらい者
おもしろおかしい都の暮らし
刺激と悪徳とデカタンス
※ (くりかえし)
時は流れて夜ごと夜ごと
夢に出てくる前の妻
帰ってみれば浅茅ケ宿
荒れはて人住む気配なく
※ (くりかえし)
れんげ草
れんげ草の花に 身をうずめつくして
とわのきずなを むすびあった
さみしいほほえみ いつもうかべていた
むらさきの花 れんげ草
流れる時代の 熱に酔しれ
いつしか国を 出たまま
流れ落ちて来た 流転のはてに
夏の夕焼けの 空を見た
とわのきずなを かわした人の胸
生きて会えるなら だきしめたい
虚無のつめたい 炎が私の
胸をひやして しまう前に
遠いむかしのに 私のすてた
むらさきの花 れんげ草
ほこりの酒場 夜の港町
つめたい風吹く 駅
酒とやまいと 女とうそに
虚無の奈落に 落ちたような
女達への讃歌
スーパーマーケットの裏道だった
僕を呼び止めた人がいる
四女の姉の嫁いだ母
あなただけには聞いてほしい
姉の落とした手紙を見たの
流れ者の男からの
愛と死と歌の妖艶の
赤裸々すぎる赤いバラ
※ 悲しいほどに自らを 解き放してしまう女たちよ
たとえ三界に家はなくとも 僕が見ていてあげる
いとこに嫁いだ次女の姉
ほどなくもして離婚して
砂ボコリ舞い立つ春の道を
歩いて行ったまま
好きな男の住む町の
ちなみの会社にもぐり込み
チャンスを待ったが挫折して
ヤクザな男とくらしてる
君よ不良中年A
耽美派の文学を こよなく愛した
夢見心地で 生きるすべはつたなく
それでも心は 屈折していて
こがらしが枯れ葉を 舞い上げている
※ 君よ不良中年A 同世代は遠くの彼方
気がついて回りを見渡せば 同世代は遠くの彼方
神の使命のように 女を愛した
傷ついても 傷つける事を恐れ
ロマンチシズムが たれながされた
カントリーミュージック が ながれている
※ (くりかえし)
街や山の徘徊を こよなく愛した
あてもないまま 遊びに体をはり
子供にもどれず 大人になれない
妻が大根を あらっている